<円高の背景>リスク資産からの逃避、為替相場
FRBが米経済の基本認識を下方修正したことが金融市場全体の均衡点修正のきっかけとなり各市場は大幅に下落しています。
米国経済の減速は世界経済全体の減速に対する大きなリスクでり、これまでの欧州、英国、日本などの比較的好調な景気は主として外需すなわち輸出に依存していたものであるため、景気拡大基調をベースに積み上げられてきたリスク資産への投資も縮小を余儀なくされるとの見方が支配的となったものです。
米金融当局が市場予想よりも先を行くかたちで緩和姿勢を明確にしたのに対して、日本当局の動きは非常に緩慢で、何ら手立てを講ずることなく傍観を決め込んでいると市場では受け止められています。
日銀は直近の政策会合で景気見通しを修正しませんでしたが、米国当局が下方修正したことでいずれ日本の景気認識も下方修正されることはほぼ確実と考えられます。
問題は日本側が主体的かつ速やかに修正するか、市場の動きに押されるかたちでしぶしぶ変更するのかです。
後者であれば、株式市場の大幅下落や円相場の急騰のような暴力的な市場調整が起きるリスクも否定できません。
日本の主要メディアもこぞって当局の無策を強く批判しアクションが必要であるとの論調を展開しています。
世論の声が強まれば政治判断の大きな材料にはなります。
伝統的に日本の金融当局は株価の動きに敏感に反応する傾向にあります。
日経平均9000円が当局の動きを誘発する一つの節目として見られています。
きのうの東証終値は9293円でこの大台まであと300円程度です。
きょうの株式市場も下落は必至でしょう。
財務大臣など政府首脳の円相場牽制の発言を仔細に見れば、最近は円高と歩調を合わせて牽制のレベルも上がっていることが分かります。
実弾介入の前段階では口先介入のレトリックを強めてきます。
また、為替介入を実施する直前には必ず介入する旨を財務大臣が市場に対して警告します。
円相場、株価、当局のレトリック変化には細心の注意を払っておきたいところです。
<今後の見通し>
ドル円は84.72まで下落して昨年の安値を更新してはいるものの、日中の瞬間の動きであり終値ベースでは更新していないため、まだブレイクしたという判断には至っていません。
きょうもこの水準のブレイクをトライする動きが出るだろうと想像されますが、きわめて重要な崖っぷちの節目であるためそう簡単に割れるポイントではないと考えられます。
安値84.80のブレイクアウトには少なくとも25銭から30銭はそのポイントを下回る必要があります。
84.50前後まで下落すれば一斉にストップロス注文が執行されてあっというまに83円台に入るだろうと想像されます。
当局が介入するならば、この局面で出る可能性が高いと考えられます。
ここで介入しなければ80円割れを視野に入れざるを得ません。
先週の相場動向
先週月曜日は、前週末の流れを引き継ぐ形で概ねドル売りが強まりました。
NYタイムに発表されたISM製造業景況指数が事前予想を上回ったことを受けてドル円は一時86円後半まで上値を拡大する動きをみせました。
しかしNYダウが200ドル超の上昇・原油相場も急伸したことでリスク選好のドル売りが強まり、ドル円は伸び悩む展開となりました。
火曜日に入ってもドルが売られる展開が続きましたが、米中古住宅販売件数成約指数や米製造業新規受注が前予想から大きく乖離する悪化となったことから、リスク回避のドル買い戻しが一時強まる場面も見られました。
水曜日は、ADP雇用統計(民間)やISM非製造業景況指数が共に予想を上回る好内容となったことからドル買いが強まりドル円は86円台を回復する展開となりました。
その他クロス円通貨もドル円に引っ張られる形で上値を拡大しました。
木曜日は、欧政策金利発表後に行われたトリシェECB総裁の記者会見で、「欧州の実体経済は全般的にきつくない」と景気回復基調の拡大を示唆したり、また「流動性供給策などの一連の緊急措置は、本来は一時的なもの」と出口政策への思惑を誘ったりしたことから、ユーロ買いが強まりました。
しかしその後「景気回復の勝利宣言をするのは時期尚早」「ECBには数多くの試練が待ち受けている」とコメントしたことからユーロ買い圧力は急速に減退し、戻り売りが優勢となりました。
この影響でユーロドルは一時1.32前半まで上値を伸ばすも、その後に1.31前半まで下落する往って来いの乱高下を見せました。
一方ドル円は、NYタイムに発表された米新規失業申請件数が事前予想を下回ったことが米雇用統計へのセンチメントを悪化させ、ドル売りが優勢となりました。
金曜日は、NYタイムに発表された米雇用統計は非農業部門雇用者数が-13.1万人、また民間雇用も+7.1万人といずれも事前予想を下回る弱い内容となり、ドルが売られる展開となり、ドル円は85円ラインまで下値を拡大するまでに至りました。
85円ラインは死守されたものの上値も重いという中で先週の取引を終えています。
今週は、米FOMCの発表が10日27:15に予定されていますので結果には注目してみたいところです。
また各国が夏休み期間に入り、取引が閑散とする可能性があります。
その為に指標発表・要人発言などでいつも以上にレートが振れる可能性があります。
取引時には注意を払いたいところです。